2025年7月22日

右の脇腹あたりがズキズキ痛む、熱っぽい、吐き気がある…。
その症状、もしかすると「急性胆嚢炎(たんのうえん)」かもしれません。
胆嚢とは、肝臓の下にある小さな袋状の臓器で、脂肪を消化する胆汁を溜めておく役割があります。
この胆嚢が細菌感染などで炎症を起こすと、強い痛みを伴う「急性胆嚢炎」になるのです。
◆ 原因の多くは「胆石」
実に90〜95%の急性胆嚢炎は胆石が原因です。
胆石が胆嚢の出口を塞ぎ、内部に胆汁がたまり、炎症が起こります。
その他にも、
高カロリー輸液や薬剤、副作用
外傷や手術後、全身の病気(糖尿病など)
などがリスクとなり、胆汁うっ滞と虚血による胆嚢の炎症「無石胆嚢炎」も存在します。
◆ こんな症状は要注意です
以下のような症状が出たら、早めに受診しましょう。
右の脇腹(肋骨の下)からみぞおちにかけての痛み
息を吸ったときに右上腹部を押すと痛む(Murphy徴候)
発熱、吐き気、寒気、食欲低下
お腹を押すと強い圧痛や違和感がある
高齢者や糖尿病患者では、症状が軽くても進行が早いことがあるため特に注意が必要です。
◆ 診断には超音波・腹部CT検査や血液検査が有効
当院では、以下の方法で診断を行います。
腹部超音波検査(エコー)・腹部CT検査:胆嚢の腫れ、胆石の有無、胆嚢壁の肥厚、周囲の炎症所見などを確認
血液検査:白血球やCRP(炎症の指標)の上昇、肝胆道系酵素(AST, ALT, γ-GTP, Bilなど)もチェック
◆ どれくらい重いの?重症度の見極めが大切です
急性胆嚢炎は、軽症から重症まで幅があります。
重症になると、
膿がたまる(胆嚢周囲膿瘍)
壊疽(組織が壊れる)
気腫性胆嚢炎(ガスを伴う重篤な感染)
といった命に関わる状態に陥ることも。
特に、
黄疸が出ている
白血球数が極端に高い/CRPが著しく高い
胆嚢が明らかに腫れている
といった場合は、重症例とされ、早急な処置が必要です。
◆ 治療はどうする?
◎初期治療:
安静・禁食・点滴による水分補給・抗生剤の投与
軽症であれば、これらの治療で改善が見込めます。
◎中等症・重症の場合:
早期の胆嚢摘出手術が基本です
手術が難しい場合には、経皮的ドレナージ(胆嚢に管を入れて胆汁を外に出す)で対応します。
◆ 放っておくとどうなる?
治療が遅れると、胆汁性腹膜炎や敗血症といった重篤な状態に進行することもあります。
また、治療で一度改善しても、再発する確率は数年間で10〜50%と高めです。根本的な治療としては、胆嚢摘出術が望ましいとされています。
◆ メッセージ
「右のお腹が痛いけど、しばらく様子を見よう…」と我慢しているうちに、病状が悪化することもあります。
特に胆石を指摘されたことのある方は、胆嚢炎の前兆の可能性もあります。
気になる症状があれば、早めに当院へご相談ください。
腹部エコー・腹部CT検査や血液検査で、胆嚢の状態をしっかり評価し、状況に応じて速やかに連携医療機関などへご紹介いたします。